「非線形的」な現象では、初期の状態のわずかな差異の影響が時間とともに急速に増大して、将来の状況が、まったく似ても似つかないものになってしまうのです。 初めに、アマゾンの森林内の蝶々が羽根を休めていたかそれとも羽ばたいていたかによって、将来の状況に著しい差を生じて、台風が発生したりしなかったりするのです。
非線形的現象に関するこの状況は、比職的に「バタフライ(蝶)効果」と呼ばれています。 バタフライ効果は、非線形的な現象に限って起こる「カオス(混沌)」の特徴の1つです。
「バタフライ効果」は、乱流状態と呼ばれる場合のように、流体の各部分が、それぞれ、運動しているために起こるものではありません。 1927年にドイツのベルナー・ハイゼンベルグの発見した量子力学の「不確定性原理」は、原子核や電子など微粒子の位置と速度の両方を同時に正確に確定できない。
「バタフライ効果」は、この不確定性原理とも異なり、現象が非線形的であることに起因しています。 「バタフライ効果」が発見されたのは1960年代のことです。
大気の典型的な非線形運動である対流を研究していた米国のマサチューセッッエ科大学の気象学教室のエドワード・ロレンツ教授が、その研究の途中で副産物として見つけたのです。 彼の研究は、物理学.化学.生物学.その他多くの学問分野に大きく影響し、科学的自然観を変えるものでしたから、画期的な貢献だと評価されて、1991年度の京都賞を授与されました。
もしも、仮に天気現象が線形的現象だと仮定しますと、バタフライ効果は起こらないので、遠い将来の予報は信頼できます。 実際の天気は非線形的現象ですから、バタフライ効果が起こります。

このために、気象庁から発表される日々の天気の予報は、1週間先までの「期予報」に限定されています、それ以上先の「長期天気予報」は、別の方式で求めている先に述べた「バタフライ効果」は、日々の天気変化に関するものでしたが、年々の変化においても「バタフライ効果」が起こります。 地球全体の平均気温について米国のウィスコンシン大学のアナスタシオ・ツォニス教授が、初期の状態を少しだけ違えた2例について、全地球平均気温を百年間にわたって計算しました。
2例の間の温度差は、初めの約4年までの問ではごくわずかでした。 それ以後、その差はかなり大きくなり約0.5℃に達しました。
このように、4年以降では「バタフライ効果」が非常に目立った結果を示しました。 温室効果気体の増加に関する数値シミュレーションでは、「バタフライ効果」のために、4年以降の結果はまったく無意味なのでしょうか。
この疑問に対して、ツォニスが答えを与えています。 彼は、まず、1つのコントロールランでの全地球の年平均地上気温の推移を求めました。
次に、二酸化炭素が年々1.5%ずつ増加するという条件以外は、コントロール.ランとまったく同じ条件で、温暖化の計算をしました。 初めの25年間では、両者の計算値の問には系統的な大きい差はありませんでしたが、それ以後では、二酸化炭素の増加する場合の変化が、コントロール.ランの値をはるかに越えて大きくなりました。
6年後の温度差が1℃を越えて、バタフライ効果では起こらないほど大きな値になり、温室効果の増強の影響を示しました。 このように「バタフライ効果」が起こっていても、数値シミュレーションでは温室効果気体の増加による温暖化が示されています。
温暖化の予測結果が、「バタフライ効果」によって乱されることは確かです。 「バタフライ効果」が予測をどのくらい乱すのか、まだはっきりしていませんから、温暖化の程度に関してもあいまいさが残り、これも温暖化の科学的予測の「不確かさ」の1つになっています。
気候の数値シミュレーションは、なるべく忠実に自然現象を表せるように、最大限の工夫がされていますが、所詮、人間の作った「フィクション」の域を抜け出せません。 従って、温暖化の数値シミュレーションの結果が自然現象の重要な特性を忠実に表していることを、実際の現象で確かめることが必要です。
そのための具体的な方法は過去の観測データと比較することです。 数値シミュレーションは、二酸化炭素が現在の2150PPMから2倍に増加して700PPMになると、地球全体の気温が1.21〜2.3℃の範囲で上昇すると予測しています。

過去百年間に、二酸化炭素が実際に増加したのは約70PPMです。 二酸化炭素が倍増した時の温度上昇の予測値を比例配分しますと、過去百年間に二酸化炭素が増えたことによる温暖化は、0.2〜0.5℃と計算されます。
二酸化炭素の増加以外の影響が作用していない場合には、この程度の温暖化が、過去百年間に実際に起こっていると期待されます。 従って、温暖化の数値シミュレーションの正当性の要件の1つは、この程度の温暖化が実際の観測データで確認できることです。
温暖化の数値シミュレーションの正当性を調べるために、観測データとして地球全体や半球全体で平均した気温を用います。 東京など1か所の観測データだけでは正当性を調べることができません。
その理由は、次に述べる「気候ノイズ」に関係しています。 温暖化を確かめるために用いる観測データは、1か所の気温データではなく、地球全体など広い地域で平均した気温です。
その理由は、1か所だけのデータの場合にはラジオの雑音、つまり「ノイズ」が大きいときに、音声の「シグナル」が「ノイズ」に邪魔されて聞き取れないのと同じようなことが起こるからです。 温室効果気体の増加や太陽活動など外的要因の引き起こす気候変化は、大気の自発的変化と区別して、「気候シグナル」と呼ばれています。
一方、「気候ノイズ」は日日の観測データから月平均値など時間平均値を決める時に生じる「あいまいさ」です。 大きい気候ノイズを含むデータでは、ラジオの大きい雑音が音声を聞き取れなくするのと同様に、二酸化炭素の増加による温暖化などの気候シグナルは、気象ノイズにかき消されてしまって見つけることができません。
それでは、気候ノイズは月平均値の中に、どのようにして生ずるのでしょうか。 「異常気象」は、1か月程度の平均的な気温.天候が、平年から著しく偏っている現象を指していますが、月平均値が平年値から少ししかずれていない場合は、異常気象とは言いません。
過去3年間に1度も起こっていない程、歴然と平年値からずれている場合に限って「異常気象」と言います。 その理由は、月平均値には多かれ少なかれ必ず「気候ノイズ」が含まれていて、月平均気候データは、その月の1日から月末までの平均値ですが、その期間は、気象現象とは関係なくカレンダーで区切られたものです。

日々の気温を調べると、数日間続く温暖な状況と寒冷な状況とが不規則に交互に起こっています。 そのような状況を、冷夏だった1988年の三陸海岸の宮古の日最高気温について例示したのが73です。
日々の値が激しく変化していて、数日の間に20℃以上の差が起こっています。 5月の月平均値として採用されるのは、31日移動平均値の5月6日の値で約18℃です。
1方、日日の値では、6月上旬の数日間に平年値を6℃も上回る高温が起こりました。 この高温が、もしも5月中に起こったとすると、5月の月平均値は約20℃となったのですが、たまたま6月に起こったので、5月の値は18℃にとどまりました。

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